インディペンデント映画を制作/上映すること(1/2)

 

こんにちは。

今回は、一般にインディペンデント映画と呼ばれるジャンルの置かれている状況について、そこから映画『タリウム少女の毒殺日記』の宣伝・上映などの取り組みをお話ししたく思います。

 

 

皆さん何となく聞いた事はあるかと思いますが、そもそもインディペンデント映画とは何なのでしょうか?(日本ではインディーズ映画とも言うが、これもインディペンデントとは微妙にニュアンスが異なる)

実はこの言葉に明確な定義がある訳ではありません。例えばアメリカでは、メジャースタジオ以外で製作された映画の中でも低予算のものを指しますが、日本では学生映画・自主映画・原作モノではない低予算映画あたりはまとめてインディペンデント映画とされることもあるし、ケースにより学生映画は含まなかったり、低予算商業映画を含まなかったりします。

それでも、大体の何となくの定義をつけるとすれば、「低予算ながらも監督の撮りたいものを撮った映画」と言えるかもしれません。

 

もちろん、制約というものは予算や規模がどうであれ付きまといます。低予算なら豪華なキャストも出せないし、機材・ロケーション・撮影日数なども限られてくるでしょう。逆に大規模な商業映画となれば様々な権利関係や表現の規制が入ってくるため、出来ない表現や撮れないシーンというものが増えてきます。また、どうしても商業的に成功しなければならないため、一見地味な企画や集客力が無いと判断される企画はなかなか作る事ができません。

 

それぞれの規模で出来ること出来ないことがあり、それぞれのスケールでしか出来ない傑作があります。

そういったことを考えると、インディペンデント映画とは必ずしも「メジャー予備軍」では無いという事が言えます。インディペンデントでしか扱えないテーマ、踏み込めない領域がこの世には数多く存在しています。

しかし同時に、大半のインディペンデント映画は興行的には非常に苦戦を強いられるのが常です。とりわけ日本においてですが、そもそも映画を上映するという行為が、商業として成立しているとは言えません。

 

 

仮に200万円の予算で作った映画を映画館で上映するとしましょう。

日本における映画のチケットは大人で1,800円が一般的ですが、この取り分は、大体は映画館と折半になるので、一人観客が見たら製作サイドには900円入ります。前売り券だと1,300円や1,500円になったりするので、更に取り分は安いですね。それでも一人当たり900円だとすれば、単純計算で2200人観に来たらほぼ200万円になりますね。

ですが映画の制作費自体が仮に200万としても、宣伝費などにも普通は結構なお金がかかっています。メジャー映画では制作費とほぼ同額の宣伝費がかかっていたりするので、同じとしたら宣伝費にも200万かけて、チラシ・ポスター作りやWEBなどでの宣伝、そして記事にとりあげてもらってりします。そして当然人件費や移動費は常にかかります。そうなると総計400万円。で、ペイするには4400人が観に来る必要があります。

 

自分の作品を4400人に観てもらうって、想像がつきますか?

しかも映画で上映するとなれば、家のパソコンで観るのとは話が違います。事前に映画の情報を調べ、時間をチェックして、その日の予定を空けておいて、電車を乗り継いで、駅から何分か歩いてやっと辿り着いて、安くは無いお金を払って観る訳です。日によっては寒っかたり暑かったり雨だったり雪だったりで、とても外出する気のしない日もあるはずです。

そこまでの手間をかけてでも観てみたい、と4400人に思わせること。考えてみても相当に困難です。

 

まあ実際は宣伝費にそこまでお金をかけられるインディペンデント映画もほとんど無いので、大抵は映画祭に出品して名前を売るところから始まります。仮に名の知れた映画祭でグランプリを穫ろうものなら、それだけで集客は何倍も違って来るでしょう。映画祭によっては、出品できただけでも箔がつく映画祭もあります(例えばカンヌで上映!なんて言われたら興味を引きますよね)。

または、例えば地域密着みたいな形で撮影して上映も地産地消にして、宣伝費をかけずに効率的に集客したりしている映画もありますね。あとは劇場の物販販売で稼いだり、という感じでしょうか。

 

 

上記は非常にざっくりとシンプルにまとめた計算ですが、とにかく「インディペンデント映画を撮って儲かった」みたいな話はほとんど聞いた事が無いですし、大半のインディペンデント映画監督は映画以外の仕事の収入によって生活しているということが現実だと思います。

 

そして『タリウム少女の毒殺日記』は、言わずもがなインディペンデント映画です。そもそもタイトルからしてメジャーではアウトですよね(日本におけるメジャーは例えば東宝です)。何と言ったって母親を毒殺しようとする日記ですから。そして内容についても、まあホームページを見て頂ければ何となく雰囲気は分かると思いますが、動物の解剖シーンあり、人体改造あり、いじめあり、セクハラありで、検閲があるならひっかかりまくりかもしれません。

それでも人に観てもらって何かを感じてほしいという強い信念の元に映画は作られ、そして今後も作品を作り続けるためにきちんとお金は回収しなければならないのです。

 

 

長くなってしまったので2回に分けますが、後編では『タリウム少女の毒殺日記』の実際にやっていることについて書きたいと思います。

嶺隼樹