やくたたずをもう一度

こんにちわ。チーフディレクターの嶺です。

つい先日自動車の普通免許を取得しまして、車の練習のために昨日から地元・札幌に帰省しています。 折りしも今日はこの冬初めての本格的な雪で、札幌市内は一日降り続けすっかり冬景色となりました。 さすがに免許取得後初の運転がいきなり雪上では不安なので、かろうじて降雪の少なめな地域に移動して運転してきました。

しかし、こんな雪の中を車で走っていると3年前のとある冬を思い出します。 その年、僕は札幌で撮影している映画のスタッフとして市内を駆けずり回っていました。

その映画のタイトルは『やくたたず』と言い、ちょうど今都内のオーディトリウム渋谷で『Playback』というロカルノ国際映画祭の本選コンペに選出された映画を公開中の、三宅唱監督の初長編映画です。僕と同じく札幌出身の三宅監督は映画監督と言っても弱冠28才の新人で、ちょうどこの頃四谷三丁目の一軒家で自分を含む共同生活を送っていた仲間のうちの一人でした。そして『やくたたず』は共同生活を送っていたメンバー4人を含む計6人のスタッフと、7人の役者が一ヶ月札幌に泊まり込んで作った映画でした。

(2010年/76分/B&W/モノラル)

 

その映画において僕は、札幌出身と言う地の利を生かして制作部を担当しました。制作部とはロケハン、撮影許可、人集め、交渉、寝処、食事、送り迎えなど裏方を一手に引き受ける役割です。

しかしその時はまだ免許を持っておらず、車の運転は他の人に担当してもらい僕はもっぱら助手席に座ってばかりでした。 その時の運転手はいずれも本州出身者で雪道の運転経験は皆無に近く、怖い怖いと言いながら凍った道を運転していました。本当は制作部こそ最も車を運転するべき役割なのですから、今にして思えば何と自分はやくたたずだったのだろうと思うのですが、その時運転手たちが感じていた恐怖を、3年遅れて今日、自分も体験できたという訳です。雪が降るとすべるし視界が悪いし本当に怖い!当時の運転手たちに改めて感謝の念を送ります。

そんな映画『やくたたず』ですが、タイミングよく明日から一週間オーディトリウム渋谷にて『Playback』関連作として上映されます。17時からの一回のみというちょっと中途半端な時間ですが、お時間ご都合つく方はどうぞ観て頂きたい。非常に現代的な切実さを描いた、才気溢れる傑作だと思います。『Playback』と併せて是非。

(2012年/113分/1.85/B&W/Dolby SR)

 

嶺隼樹