テレビCMの表現から見る、時代と価値観の変化

あなたはテレビ番組に挟まれるCMをじっくり最後まで見ることはありますか?

もしかしたら多くの人が「つまらない時間」と切り捨て、テレビの前から離れて

しまっているかもしれません。

しかし、時代を考察する上で、テレビCMは重要な要素です。

CMが生まれてからの変遷と、今使われている表現方法を注意深く観察してみると、

時代の雰囲気、価値観の変容が透けて見えてきます。

 

年代別に見る、CMの表現方法

日本のテレビCMの歴史は1950年代初頭に始まりました。そこから現在に至るまで、

時代背景に合わせて表現方法は日々変化しています。

 

60年代 CMの誕生 ~「豊かさへの憧れ」へ

日本で最も古いCMは、1953年8月28日の精工舎の『正午の時報』でした。ニワトリの

キャラクターが目覚まし時計のゼンマイを調整し、アナウンサーが時刻を伝えるという

シンプルな内容です。このCMはYouTubeでも確認できます。

 

 

60年代に入ってからは、映像技術の進歩とともにテレビCMも量産されはじめます。

高度経済成長時代に「三種の神機」と呼ばれた、カラーテレビ・クーラー・車のCMが

放映され始めるのもこの時期からです。表現方法も便利な暮らしを描いた「豊かさへの

憧れ」を喚起するものや、高度経済成長期における「頑張って働けば豊かになれる」

という価値観を表したものが多く放送されていました。

 

70年代 価値観の変容と女性イメージの転換

70年代を象徴するCMが、富士ゼロックス株式会社の

「モーレツからビューティフルへ」をテーマとしたもの。

60年代の「頑張って働けば豊かになれる」から、美を楽しむ感性や生き方を

よしとする新しい価値観への変容が、このキャッチコピーから読み取れます。

また60年代後半~70年初頭には、化粧品や女性向けカジュアルウェアのCMが登場し

始めます。それまでになかった表現が次々と生まれ、新しい女性像が描かれるように

なりました。例えば、株式会社レナウンのCMでは、斬新なポップアートを背に

「ミニスカート」や「ショートカット」といった、最新のオシャレを楽しむ

女性たちが、軽快なBGMにのりながら描かれています。それまでの

「控えめな女性像」から「自由な女性像」へと転換しつつあった時代背景が、

CMで表現されたのです。

 

80年代以降 価値観より、技術を全面に

この頃からCGでの合成や、リアルとバーチャルを交錯させたCMが登場し始めます。

デジタル技術を駆使し、多様な表現方法が用いられるようになったのです。

2000年に放映された日清食品グループ『日清カップヌードル』のCMが、

よい例の一つ。ベルリンの壁が崩壊する現場からエルヴィス・プレスリーのコンサート

会場まで、登場人物が時代や場所を超えて移動する。CG技術ならではの表現方法が

用いられています。

記憶に新しいところでは、江崎グリコ『アイスの実』のCM。実在しない架空の

AKB48のメンバーをCG映像で登場させました。

80年代以降は明確なメッセージというより、技術を駆使した表現方法に特化した

時代だったと言えるかもしれません。

 

インターネット台頭による、CM表現への影響

これまで年代別にCMの表現方法の移り変わりを見てきましたが、2014年現在の

テレビCMはどうなのでしょうか?

最新の広告電通賞を見てみると全体的に、「感動を与えるCM」が多く

見受けられます。

笑いを喚起させるものもありますが、どちらかというとストーリー性やテーマ・

メッセージ性を感じさせるCMが多い印象です。

好例は、2年連続で受賞を果たした大塚製薬「カロリーメイト」のCM。

女優の満島ひかりさんが歌う『浪漫飛行』や『ファイト』には強いメッセージが

込められており、見る人の心を打つものがありました。

こういった「感情に訴えるCM」が増えてきた背景には、インターネットの台頭が

要因の一つとして挙げられるでしょう。

Web上で消費者自らが見たい広告を選べるようなった今、商品を全面に

押し出すだけでは敬遠されてしまいます。

CM自体に特徴を持たせ、興味をひく仕掛けを作りだす必要があるのです。

消費者の「心に残る」ための工夫を考えなければならないのです。

 

CM表現は、時代を読み解く鍵

このようにテレビCMを読み解いていけば、時代のコンテクストを把握でき、人々の

消費行動だけでなく社会全体の価値観をも知ることができるのです。これからは

“時代の雰囲気”を知るために、テレビCMを見てみるというのはいかがでしょうか?

 

 

参考: